2022-10-19

テーマについて


 

美術と一口に言っても、そこには膨大な歴史があり、茫洋なつかみどころのない世界が広がっている。

そのような中で自らの表現のテーマを見つけることは、本当に大変なことで、私も美大に入ったばかりの頃は先生に、

「表現とは何か?表現する内容をよく考えろ!!」と、講評会のたび、口酸っぱく言われた。


学生初期の私には、その先生方の言葉が全く理解できず、

「テーマなんかより、自分がすごいと感じる何かを作ればいいじゃん、美術なんだから。

先生方は何を言ってるんだろう?」

と全く理解できない時期が何年も続いた。


普通そういうタイプは、「何を描くか?よりも、どう描くか?」ということに関心があるので、フォーマリズムよろしく、抽象画に行き着きそうなものなのだが、私はなぜかそうならなかった。





人間生きていれば、なにかしら考えているもので、今日の晩飯は何を食べようか?から、なぜ人間は生きるのか?など人間の悩みは様々だ。


そんな中で私がテーマを選ぶ際に、意識したことは、学生時代に金がない。というような悩みがあったとしても、金がないをテーマにはしないということだ。

入口が自らの個人的な悩みなのはとても良いのだが、そこから、なぜ金がないのか?なぜ金が必要なのか?そもそも金とはなんなのか?金に似たものはないのか?人間が生きる上でそもそも金は必要なのか?なぜ人は生きるのか・・・と、深く深く掘り下げて、なんだかわからなくなるくらい考えてこそ、美術のテーマになると私は考えている。



今日、美味しいものが食べたい!というような即時性のあるテーマは、歴史のある、いい意味で遅い表現である絵画には向かない。



芸祭の空気漂うこの冷えた風にあたりながら、

表現が多様化し、茫洋な美術にテーマが見つからない私のような美大生に…。