2021-05-26

北斎

 


北斎の絵は西洋味が強い。


北斎の絵を見ると、なぜヨーロッパにあれだけ受け入れられたのか、私にはわかるような気がする。

彼の作品は、日本のそれまでの線の運びとは全く異質だからだ。


私が思うに、大和絵の系統はもとより狩野派のような漢画の系統にしても、それまでの浮世絵にしても、日本人のそれまで描いてきた線は、どこか丸みや柔らかみのある線を引いてきたように思う。

それは日本人の持っている体質は元より、絵師が学んだ画系によるのかもしれない。

それに対し、北斎の描く線はどこまでも峻険で異質である。

筆の返しも強弱も、運びがいちいち厳しく誇張も強めだ。




北斎は西洋画に学んだことは有名だが、彼の浮世絵作品はその影響が非常に強い。構図だけではなくどこまでも派手な表現により西洋画のような強さをしている。

私には、同時期の喜多川歌麿の作品が小津安二郎映画だとすると、北斎作品はハリウッドの超大作映画に見える。

それくらい作品が並んだ時に、北斎作品は強い。




北斎はそれまでの日本の表現に、全く異質の西洋表現というスパイスを、かなり強めに加え、全く未知の料理を産み出した。

日本のカレーライスのような、それまで精進料理しか食べ慣れていなかったような日本人の生み出した料理は、ジャポニズムの流れとともに西洋に受け入れられ、日本を代表する絵画となった。




人と違った唯一無二の個性は、そのような異質な学びから生まれるのかもしれない。