高村光太郎の芸術論集だ。
ある方のお話の中で、この芸術論集を絶賛されていたので、私は恥ずかしながら、最近初めて手に取った。
明治から昭和前期を生きた高村光太郎は、詩集『智恵子抄』で有名な詩人であるが、父・高村光雲と同じく、自ら彫刻家でもある。彫刻家としては東京国立近代美術館に収蔵されている《手》という作品で、よく知られている。
そこで、この芸術論集なのだが、この芸術論集が本当に素晴らしい。
今の時代に何が素晴らしいって、それは美術作品における「触覚」と「物自体の美」について語っている点だ。そこに私は今の時代に通じる先見性を感じた。
だいたい大事なことっていうのは、最初に習うし、先人が語り尽くしてたりする。人にとっての大事なことは、だいたい幼稚園までに習うのと一緒だ。
絵画や彫刻などの古いメディアは、「触覚」と「物自体の美」を忘れると途端にチンケな図像になってしまう。絵画における触覚体験と言えば、私は中学生の頃に、ゴッホの画集と実際の作品の差に愕然とした覚えがあった。画集の図版とゴッホ作品は全然違う。
今回作家の書いた芸術論集として、岡本太郎の『今日の芸術』と、この高村光太郎の『緑色の太陽』は、私にとっての幼稚園になった。