2018-06-10

美大生のアイデンティティ


サカナクションというバンドに、《アイデンティティ》という曲がある。

「アイデンティティが〜な〜い」
で、始まるこの曲は美大時代の私を思い出す。

絵を描くことが、ただ好きで、美大に入った私は、入学後に戸惑っていた。
美大では表現者として、自分らしさを表現することを求められる環境だったからだ。

先生方には、
「自分を表現しろ!」
「自分自身を見つめて、深く掘って掘って、自分らしさを探れ!」
「大浦は技法にばかり興味を持ちすぎていて、そもそも表現がなんたるかわかっていない。」
と口すっぱく言われるが、そもそもそんな自分らしさが見つからないのだ。
先生方の助言は、今考えるともっともなアドバイスばかりなのだが、その頃の自分には全く意味がわからなかった。

自分をいくら見つめても、自分をいくら掘っても、自分らしさが見つからない。
アイデンティティがない。
アイデンティティが、そもそも見つからない。

そんな時に心理学の授業で、
「アイデンティティは、他者の鏡があって初めて気付くことができるもの」
という話に出会い、目から鱗が出た。
いくら自分を見つめても、そもそも自分らしさはわからないらしい。

私が小さな頃から絵が好きでも、世界に自分しかおらず、自分しか見ていない場合、そのことは当たり前すぎて、私が絵を好きなのは、自分らしさとは感じない。
世の中、みんな平井堅なら、あの高い鼻も掘りの深さも、歌のうまさも、平井堅らしさとはならない。

アイデンティティは他者の鏡があって、初めてわかる。
ただ、その鏡は、どれ一つとして同じ映り方をしない。
気をつけて、自分らしさを見つけよう。

大学入学シーズンが終わり、私と同じ悩みを抱えたみなさんに…。